コラム

本にまつわるエトセトラ

営業部

みなさんは、「痕跡本」という言葉をご存知でしょうか?「痕跡本」とは、古本に前の持ち主の「痕跡」が残されていることを言います。それは、書き込みであったり、メモだったり手紙だったりと様々。
古本屋で本を買ったことのある人であれば、一度くらいは経験があるかと思います。

こんなことはありませんでしたか?ページをめくっていくと、ヒラリとレシートが一枚落ちてきたり…。しおりにでも使っていたのでしょうか。これも立派な痕跡です。さて、何を買ったのでしょうか?レシートを見てみると地元でもない地方のスーパーで食材を買った時のもの。もしや、前の持ち主は随分と遠くに住んでいたのかもしれません。この本は遠いところから旅をして、この近くの古本屋の棚に入り、私の手へと渡ってきたのだな、と想像しロマンを感じてしまうのです。

古本好きの私ではありますが、痕跡本という言葉を最初から知っていたわけではなく、知る以前は鬱陶しく思っていたほどでした。
ちょっとしたキッカケによって見方がガラリと変わったのは、友人と古本屋の店主の会話でした。
例によってお気に入りの古本屋へ遊びに行った時のことですが、それぞれ書棚を見ていると、友人が「あ、痕跡本!」と。店主も「時々あるんですよね。面白いものとかも…」一体なんの話をしているのか聞いてみると、その本には、走り書きのような感想までもなく、なんとなく読んだ後の「気持ち」が書き込まれていました。こういった書き込みやメモが挟まっていたりするものを痕跡本といい、それが前の持ち主の人柄だったり背景だったりを想像できて面白いというのでした。
これまでの考えがガラリと変わった瞬間でした。

それ以来、古本屋で誰かの痕跡を見かけるとつい買ってしまい、書籍の内容よりも楽しんでしまう事もしばしばありました。
ある本からは(たぶん)さくらの花の押し花が出てきた事があり、それはかなり長い年月を本の中で過ごしたのか、薄ピンクの花びらが少し薄くなり、微かにあちら側が見えるほどの透明さがありました。なんて素敵なんでしょう。どのページに挟んであったのかが気になって仕方がありません。きっとこの花を挟んだのは女性で、年齢は上の方で…好きなページに挟んだのか、それとも単に押し花を作るのにたまたま手に取った本がこの本だったのか…。挟んだことすら忘れて古本屋へ出されて、ようやく私に発見されたのです。
想像力を膨らませるとドラマが見えてきます。

なかなか探そうと思って出会えるものではないのですが、同じように痕跡本に魅せられた方の書籍、『痕跡本のすすめ』古沢和宏著(太田出版)というものがあります。著者がこれまで出会った痕跡本の話と、痕跡本の探し方など非常に面白い読み物です。

印刷会社としては是非新刊本を手に取っていただきたいところではありますが、本を好きになるきっかけのひとつとして、面白いと思っていだだけたら何よりです。
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