コラム

世界は3極に分断される

代表取締役 萩原 誠

 ロシアによるウクライナ侵攻から5ヶ月が経ちました。戦況はロシア側が東岸部を侵攻して、町はロシア化が進んでいます。一方プーチン氏の思惑とは裏腹に北欧諸国のフィンランドとスウェーデンはNATOへの加盟を決めました。第二次世界大戦後、築いてきた世界の秩序は崩壊の危機にあります。
 こうした許されない侵略戦争にもかかわらず、世界にはロシア寄りの国もたくさんあります。その理由の一つとして、世界では外交は国益第一が常識だからです。またアメリカの威信が落ちたことも大きな要因の一つです。
 国連の人権理事会からロシアを追放する4月7日の国連決議では、棄権・反対・無投票が100ヵ国にのぼり、賛成93ヵ国を上回りました。英誌エコノミストの調査部門EIUによると、ロシアのウクライナ侵攻を非難したり、制裁している国々は、西側諸国を中心に世界人口の36%にすぎません。32%はインドやブラジル、南アフリカのように中立を決め込む国々。残る32%はロシアの主張を理解するか、支持する中国やイランなどです。
 そして米国主導に代わって現れてきたのは、3極化の秩序です。3つの異なる勢力がせめぎあう世界です。第1の勢力は、米国や欧州連合(EU)、日韓豪、英国、カナダといった西側陣営です。第2は、中国とロシアを中心に、イランや北朝鮮が加わります。第3は、どちらにもくみしないインドや南アフリカ、インドネシア、トルコ、ブラジルといった「中立パワー」です。
 3極秩序が生まれる理由は2つあります。まず、西側と中ロが相手への対抗上、より濃い結束に向かう。第2に、その間に挟まれるインドやトルコなど新興国が国力を増し、西側、中ロのどちらにも偏らず、独自の路線を追求する行動を強めています。例えば、トルコはロシア、ウクライナの停戦交渉をお膳立てしたかと思えば、黒海の封鎖問題を打開するため、6月23日に英国とも外相会議を開きました。フィンランド、スウェーデンのNATO加盟にも賛成に回りました。インドは3月以降、ロシアから原油輸入を急増させる一方で、中国をけん制するため「QUAD(クアッド)」の枠組みで日米豪との連携をしています。
 西側としては、このような中立パワーを西側に引き寄せ、西側主導の秩序に戻して行くことが目標です。
 それには戦略上、各国が何を必要としているのかを個別に見定め、互いの利益にかなう協力を重ねるしかありません。
 日本としてはアメリカに守ってもらえるという旧秩序に慣れ切った頭を切り替える必要があります。今後日本として、日本人としてどう考えていくか、重大な岐路に立っていると思います。
参考:日本経済新聞6月28日「Opinion」
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