コラム

ロシアのウクライナ侵攻と日本の昭和史について

代表取締役 萩原 誠

 2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻をして以来、毎日のニュースでこの話題が取り上げられない日はなくなりました。地政学的ないろいろな問題があるにしろ、21世紀のこの時代に主権国家に侵略戦争を行うなどあまりに想定外でした。4月5日のニュースではロシア軍が撤退したキーウ近郊で残虐な光景が流れ、ロシアへの戦争犯罪も問われています。あらためて大儀の無い戦争に憤りを感じます。
 日々のプーチン大統領の映像は、常に険しい顔をしていて戦況が計画通りにうまく進んでいないのが見て取れます。一方ゼレンスキー大統領はキーウに留まり、日々各国の首脳や議会に働きかけ、援助を熱心に乞うています。その姿勢は多くの国から共感を得ており、世界の多数の国で援助の手が差し伸べられ、メディアの活用の仕方では、プーチン氏より圧倒的に上手だと感じています。
 また両国はなぜ戦争に至ったのか、その歴史、背景への関心の高まりが書籍の売れ行きにも影響しています。特に売れているのが新書で、中公新書の『物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパの最後の大国』は2月上旬から売れ始め、現在は品切れ状態だそうです。ちくま新書の『現代ロシアの軍事戦略』も売れ筋で、連日テレビでウクライナ情勢を開設する小泉悠・東京大学特任助教の著者で累計7万1千部と売れています。その他2022年度の「本屋大賞」を受賞した『同志少女よ、銃を撃て』(早川書房)も独ソ戦を題材としており、47万部と急伸長しています。新星出版社の『サクツとわかるビジネス教養 地政学』はロシアの地政的な特徴からウクライナへの侵攻を解説しており、私も読みましたがとてもわかりやすい本です。その他文庫、絵本など、新書の教養分野にとどまらず、小説、児童書などあらゆる分野で注目の本が登場しています。日本人の関心の高さがあらためて伺えます。この紛争の真実は何か「知りたい」「考えるきっかけにしたい」という読者の思いとともに、本の持っている力をあらためて感じることができました。
 この戦争が始まる少し前に、半藤一利著「昭和史」の上下巻を読みました。文庫本で1冊が600頁ある大作ですが、昭和の時代を日本人がどう生きたかが詳細に記述されています。その中で現在のロシア・ウクライナ戦争を思い起こさせるのが、第2次世界大戦以前の日本です。丁度第2次世界大戦の前に、日本は第一次世界大戦後で欧米が疲弊しているのを幸いに、中国の満州を侵略して、勝手に満州国を建国してしまいました。その暴挙に当時の国際連盟の総会で加盟44か国のうち42か国より否認され、日本はどんどん孤立化して行き、国際連盟を脱退せざるを得ず、結局第2次世界大戦に突き進んで欧米と戦争をすることになりました。その後の日本の悲惨さは、皆さん知っての通りです。改めて自由の尊さをかみしめております。
 この機会にお薦めの本ですので興味のある方はぜひ読んでみて下さい。

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