コラム
アンパンマンのこと
総務部
昨年の4月から9月までのNHKの朝のドラマ「あんぱん」は、アンパンマンの作者やなせたかしさんと奥様・暢さんの物語でした。ご覧になったかたも多いと思います。
やなせさんは戦争中で一番苦しかったことが、食べ物がなかったことだそうです。一晩中歩き通しで眠れなかったり、過酷な状況があっても眠ることができれば回復します、けれどもお腹がすく事、食べるものがないこと、飢えることは耐え難い、何よりも一番辛いことだったとおっしゃっています。
戦争が終わったある時、道端でボロボロの服を着た幼い兄弟が楽しそうにおにぎりを分け合って食べている姿をみたとき、
「本当の正義とは、お腹のすいている人に食べ物をわけてあげることだ!」と思ったのだそうです。
敵を倒すことが正義だという考えを植え付けられてたけれど、人を殺すのではなく、人を活かすことが本当の正義、それは、飢えた人に食べるものをあたえることが本当の正義だと直感したそうです。そしてこれがアンパンマンの原型となったということです。
アンパンマンは困っている人のところに飛んで行って、敵にあんパンチを放って、人を助ける、そして自分の顔を食べさせて元気と勇気を与えるのですが、人に顔を食べさせるから自分はふらふらになってしまうのですね。やなせさんはそこを描きたかったとおっしゃっています。自分が傷ついてもふらふらになっても、どうしても人を助けたい、喜ばせたいと思うとき、本当の勇気が湧いてくるものなのだ、とおっしゃっています。
アンパンマンは目の前の空腹な人、困っている人に自分の顔を差し出さずにはいられないんです、顔を差し出したら食べられて、ふらふらになってしまう、とはその時はまったく考えていないのですね。
アンパンマンが世の中に出始めた時、顔を食べさせるなんて残酷だ、などと言って、大人たちには評判が悪かったそうです。でも幼い子供たちには人気があって、保育園や幼稚園では、絵本が繰り返し読まれるのでボロボロになったそうです。そして、どんどん有名になっていったそうです。それは、子供たちは純粋な目でアンパンマンを見て、物事の本質をぱっと掴むことができたから、子供たちがアンパンマンを育ててくれた、やなせさんは、そういうことがだんだん分かってきたとおっしゃっていました。
そしてやなせさんは人間が一番嬉しい事は何だろう?それは「人を喜ばせること」だとおっしゃいます。自分が何者になるかではなく、誰を喜ばせるか、飢えた人に一片のパンをあげられるかということ、だから人生は「よろこばせごっこ」とおっしゃっています。まさにご自身の辛い戦争体験を通して、人を殺すのではなく、人を活かすこと、アンパンマンの誕生によって人の喜びがわが悦びとなったわけですね。今、世界中にこのアンパンマン精神が広まってほしいと願うばかりです。




